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観測手法

Abstract

マイクロ波から可視光までの幅広い波長帯で、能動・受動など様々な計測手法で得られた地球観測衛星データを活用した研究を行います。また、将来を見据えたリモートセンシング技術の研究開発にも順次着手していきたいと考えています。下記では、多種多様な地球観測センサのうち、ごく一部の例と関係する研究テーマを示しています。

マイクロ波放射計

©JAXA
受動型電波センサは、用途に応じて1GHz〜1000GHz程度の周波数帯の電波を受動的に計測する装置です。イメージしにくいかもしれませんが、我々の周りの物体は電波帯でも「光って」います。その電波の強度が観測対象の温度や状態、および周波数によって変化することを利用し、逆に観測対象の状態を推定することができます。1〜100GHz程度の周波数帯を計測するマイクロ波放射計は、地球上に固体・液体・気体の形で存在し、他の太陽系惑星との差別化に大きな役割を果たしている「水」の観測に有用であり、水循環把握や気象予測などに用いられます。NASAの惑星探査機Mariner 2に初めて搭載され、米国により1970年代から地球観測に供せられました。日本は現在、水循環変動観測衛星GCOM-W(左上図)搭載の高性能マイクロ波放射計(AMSR2)を運用しており、40年規模のデータが蓄積されつつあります。
  • センサ校正と長期データセット構築に関する研究
  • GCOM-W/AMSR2のプロダクトを用いた水循環および雲・降水システムに関する研究
  • デジタル型マイクロ波放射計の研究(人工電波除去・電子走査)

合成開口レーダ

©JAXA
レーダ(RADAR)はRadio Detection and Rangingの略で、自ら電波信号を送出し、対象からの反射波を計測することで対象の検出と距離測定を行うセンサです。天気予報で用いられる気象レーダや船舶レーダなどで比較的馴染みのある計測手法だと考えられます。人工衛星搭載レーダには、海面高度を計測する高度計、海上風速・風向を計測する散乱計、雲・降水の高度分布を測る雲・降水レーダなど様々な種類があります。日本の陸域観測技術衛星ALOS(左上図)とその後継シリーズに搭載される合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar, SAR)は、信号処理技術を駆使して空間分解能を劇的に向上させたレーダです。電波帯を用いていることから雲の影響も最小限であり、災害把握などの用途で近年注目されています。SARは電波の強度だけでなく位相の情報を取得するため、これを用いた地表変位計測の研究・利用も進んでいます。
  • 干渉SAR時系列解析の手法確立
  • 全球測位衛星システム(GNSS)データ等の併用による大気遅延などの各種補正処理

可視赤外放射計

©JMA
可視赤外放射計は最も直感的に理解しやすいセンサと言えます。可視光は我々の目に見える光であり、その計測に用いる放射計は望遠鏡と高精度なデジタルカメラの組み合わせと考えてもさほど間違いではありません。赤外線は我々の目には見えませんが、赤外線ストーブやサーモグラフィーなどで知られるように、対象の温度情報を良く反映しています。可視・赤外域の電磁波は電波と比べて波長が短く、所望の空間分解能を得るための望遠鏡のサイズを小さくできます。そのため、現時点では運搬できる質量に制限のある静止軌道衛星への搭載も可能です。ひまわり8号(左上図)は日本の気象庁が運用する最先端の静止気象衛星であり、可視赤外放射計AHIにより日本域では2.5分、フルディスク域(静止衛星から見える範囲:1機では全球の1/3程度しか見えません)では10分間隔という高頻度で観測が行われます。多波長光学放射計SGLIを搭載する気候変動観測衛星GCOM-Cは高度約800kmの極軌道に投入されており、さらに高い空間分解能で全球の観測を行うことが可能です。
  • 機械学習によるひまわり8号大量データからの情報抽出
  • MODIS、GCOM-C/SGLI等の海面水温・海色データなどを用いた水産分野への応用研究

全球測位衛星システム

©JAXA
Global Positioning System(GPS)や日本のみちびき(準天頂衛星システム、左図)で構成される全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System, GNSS)の主目的は位置情報の把握ですが、送信される電波の大気中での遅延や海面反射を計測することにより、地球大気・海洋の計測にも用いることができます。例えば、国土地理院はGNSS連続観測システム(GEONET)と呼ばれる全国約1,300点の電子基準点からなる高密度な観測網を運用しており、この観測網で得られた水蒸気の情報は日々の天気予報にも入力されています。NASAが2016年に打ち上げたCYGNSSは8機の小型衛星のコンステレーションであり、GPS信号の海面反射を受信してハリケーンなどの風速を計測するものです。
  • 低コストGNSS受信機システムによる可降水量観測網の構築
  • GEONET観測データを用いた水蒸気変動の研究